ビストロへの愛と悩み

 私はビストロが好きだ。昔から各国の、特にヨーロッパの郷土料理についてのWikipediaを読むのが好きだったから、自然とこういう料理食ってみたいな、という発想になった。そして人生初ビストロ(覚えてないけどたぶん22~23歳頃のことだと思う)に行ってみると、あるわあるわ食べてみたかった憧れの料理の数々。見るだけでも楽しいのに、実際に食べることができて、おまけに美味い。料理文化に関する私の性癖にズドンと来るのが『人間は何を食べてきたか』シリーズのドイツのソーセージ回だ。あれは肉食文化の神髄みたいなものをまざまざと見せつけてくる。気になった人はジブリから出ているDVD全集を買ってみてほしい。高いけどもお金を払う価値があると思う。

 

 で、ビストロ。ビストロって本格派の西欧肉料理に比較的簡単に出会うことができる点が良い。レストランに比べればリーズナブルだし。この点、ドイツ料理を標榜してる店には思いっきりジャパナイズされたメニューがあったりして個人的に興ざめしてしまう。申し訳程度のソーセージ、あとは唐揚げなどを置いてるところとか非常に多い気がする。いやまあ美味しいんだろうけども。わざわざドイツ料理店に足を運ぶからにはアイスバインとかクヌーデルとか食べたいよ、私は。そんな「唐揚げ」って思いっきり書かないでくれよ。ハイデルベルク大学とか黒い森とかドイツポストのラッパのマークのことなんかを考えながら食べたいじゃないか。唐揚げではダメなんだ。パブに行ったらパイントグラスでギネスを飲みながらフィッシュアンドチップスを頼んで、横に添えてあるケチャップには目もくれずにモルトビネガーをぶっかけて食いたくなるような人間なんだよ。

 

 はい。私のような人間にとって、ビストロはこちらが思い描いている「本物」に近い料理を提供してくれるお店が割合として多いのではないかと思っている。実際に本国で提供される料理と全く同じものが出されているのかどうかは置いておいて。イタリアンのお店も当たりが多いとは思うけれど、フランス料理の方が好みなのでビストロ偏重。

 

 ただ、いくら本来の意味が「安居酒屋」的だとしても、日本でビストロというと雰囲気を大事にしている店が多いし、やはり1人では入りづらいと思ってしまう。友達を誘うにしても、向こうが身構えちゃうだろうなあと思って誘いづらいし。悩ましいね。ワイン飲みに行かない?とかも誘い方として個人的に気持ち悪い。そもそも酒に強くないがワインは結構好きで、でもワインを好んで飲んでる人間だと思われたくないんだよな・・・「お、お洒落ですね・・・」とか言われそうで怖い。やっぱり雰囲気があるという時点で友達と行くには難しいのかも。今年のうちに1人ビストロデビューできたら新たな扉が開くかもしれない。鹿肉食いてー。