私は大学進学のタイミングで一人暮らしを始めて以来、定期的に「きちんと生活している」という状態への憧憬を抱き続けている。このブログにはそういうテーマで書いた記事がいくつかある。基本的には掃除について書いてきた。今回も掃除と関連することではあるが、今までとは若干切り口が違うかもしれない。
そもそも「きちんと」とはどういう状態のことを想定していたのか、その状態に至るためにどう足掻いてきたかについて整理してみる。
まず、「きちんと」とは何か。特にモデルとする状態があったわけではないのだが、私はとにかく片付けが苦手なので、「物があるべきところ(定位置)に収まっている」「床に物が散乱していない」「部屋の端や隅にホコリが溜まっていない」こういう状態を希求してきた。たまにインテリア雑誌を読むことはあっても、それはあくまで暇つぶしでしかなく、自分の部屋をオシャレにしたいという欲求はそこまで強くなかった。ということで、先述した具体的な状態から抽象度を上げて考えると、私が目指していたのは「見栄えがいい」というよりは「だらしなくない」「清潔感のある」「整理整頓された」部屋だったと思う。これらとは少し違い、「その人なりの工夫がある」部屋にも憧れがあった。工夫というのは衣食住を基本とした生活サイクルを上手く回すための工夫のことだ。そのような工夫が凝らされているのを見ると、その部屋の持ち主はうまく自分の生活をコントロールできているのだろうなと羨ましくなった。
では、きちんとした状態に至るために私はどう足掻いてきたかについて触れる。私の部屋は、先述した状態とは逆の状態であることが殆どだった。生来のズボラをもってしても看過できないほどに部屋が荒れ果ててから、ようやく重い腰を上げて片付けを始めることが多かった。片付け終われば確かに気持ちがいい。なぜもっと早く片付けなかったのだろうと損した気分にすらなった。そのときの高揚感を忘れないためにブログを更新したりしていたが、結局掃除週間は長続きしなかった。自分なりに部屋が荒れることへの再発防止として「週間掃除スケジュール」なる票を組んで冷蔵庫に貼るなどしたが、それでもダメだった。それもそのはずで、高揚感を忘れないためにブログを書くなどというのは、ただのハイテンション日記であり、部屋が汚くなることを防止できるはずもなければ、掃除習慣を身につけるのに資するわけでもない。再現性がまるでない。スケジュールを組んだことにはまだ評価できる点はある(この試みは去年にしたもので、多少足掻き方にも改善が見られるのが面白い)が、仕組み化としては弱いと言わざるをえない。週ごとにどこを掃除するかをリストアップしたスケジュールも、言ってしまえば「やるぞ!」という宣誓でしかないのだ。仕組みではなくただの言葉である。
そんなわけで私は神戸に引っ越してくるまで結局荒れた部屋で過ごし続けていた。但馬に住んでいるときの荒れようは酷かった。思い出したくもない。
神戸に引っ越して環境が何もかも変わったわけだが、住環境が相当改善したのがいちばん嬉しい変化だった。まず部屋が広い。持ち物が多い私が住んでもスペースに余裕がある。天気も良い。日本海側とは比べものにならないくらい晴れの日が多い。カーテンを開ければオーシャンビュー。頭もよく回る。生活について考える余裕が出てくる。せっかく良い環境なのだから、最大限それを享受したいという気持ちになる。
そういう流れで私は無印に行ってふきんを買った。
なんてことはない普通のふきんだ。さっき書いたようなことを考えながら自炊をして、トレーニング後のご褒美のステーキを焼き、ナイフとフォークを手に取ったときに思ったのだ。「なんか水垢みたいなシミがでてきて汚えな」と。せっかく気分を上げるために買ったお気に入りのカトラリー(柳宗理)がシミでマダラになっている。それが我慢ならずにふきんを買いに走った。結果的に、家事の中でもかなり嫌いな部類に入っていた洗い物が苦でなくなった。むしろ好きになったとすらいえる。カトラリーはもちろん、HARIOのガラス製品などを洗ってからすぐにふきんで磨き上げるのが、なんともいえない幸福感をもたらしてくれるようになった。もちろん忙しくて洗い物をためてしまう日もある。そういうときにも、ふきんのおかげで、洗った側からすぐに拭いて食器棚に収納していけるようになったので、「この洗い物の量じゃ水切り棚が溢れてしまうな・・・」というネガティブな気持ちにより洗い物をしたくなくなる、という負のループからも脱することができた。

ふきんを買ってから、私の家にあるステンレス製食器が一様にセクシーなまなざしを投げかけてくるようになった。セクシーだよ、お前たち・・・。

私はAppleアンチだ。けれど、いつかジョブズが言っていた「人々がこぞってiPhoneをケースに入れるのか私には理解できない。傷が入ったステンレス製品を私は美しいと思う」みたいな発言には全面的に同意する。iPhoneじゃなくてiPodで、ステンレスじゃなくてアルミだったかもしれない。まあ、そこはどっちでもいい。

落ちワタ混ふきんは12枚入りと大容量なので、食器を拭くうちにふきんが水気を含んでしまいすぎたときには、すぐに別のふきんに交換できるのが良い。安いし。久しぶりに会う友人とカフェでお茶でもするときには、「これを買うと幸せになれて・・・」と言ってこのふきんをおもむろに取り出したいなとか思う。
水回りのローテーションが上手くいくと、不思議なことに家の色々なところが上手くローテーションし始める。下着をしまう位置も固定できた。一人暮らしを始めて10年目にしての快挙。今まではピンチハンガーにかけっぱなしとか、定位置を決めたとしても部屋に置いているタンスの中にしまったりしていたので、替えの下着を持たずにシャワーを浴び、入浴後、全裸で下着を探し回ることが多々あった。脱衣所に下着のストックを置くようにすればいいだけなのだ。そんな当たり前のことに、ふきんを買ってからようやく気付いた。フェイスタオルもバスタオルも規則正しく循環するようになったし、靴下も美しくタンスにしまえるようになった。毎日ハンカチにアイロンをかけて出掛けるようになったし、ついでに床もぞうきんで拭く習慣ができつつある。万歳。



ふきんを買えば、スーパーで見つけた綺麗なイトヨリダイでアクアパッツァをつくることもできる。ヤングコーンはにんにくとオリーブオイルとで炒めると上手い。アヒージョとかにも合う。ふきんと同じくらいおすすめ。